大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判支援連絡会

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■高裁関係■

講演「沖縄戦と集団自決裁判について」
(2009.11.27 大田平和総合研究所・大田昌秀さん)

高裁判決の意義
  沖縄県歴史教育者協議会委員長 平良宗潤さんの講演

『母の遺したもの』の著者として
宮城晴美さん(沖縄女性史研究家)の講演

大江・岩波沖縄戦裁判勝利の意義

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◆講演「沖縄戦と集団自決裁判について」
(2009.11.27 大田平和総合研究所・大田昌秀さん)

◆最高裁あての要請書(「大江・岩波沖縄戦裁判」の第二審判決(大阪高裁)を維持し、上告棄却の判決を求める要請書)ができました。
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控訴審判決全文
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控訴審(大阪高裁) 判決


(↑2008.10.31. 大阪高裁にて)

高裁判決の意義  沖縄県歴史教育者協議会委員長 平良宗潤さんの講演

『母の遺したもの』の著者として 宮城晴美さん(沖縄女性史研究家)の講演


沖縄戦裁判大阪高裁判決についての三団体共同声明

    2008年11月5日

大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判支援連絡会
沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会
            大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会

1.2008年10月31日、大阪高等裁判所第4民事部(小田耕治裁判長)は、平成20年(ネ)第1226号 出版停止等請求控訴事件(原審・大阪地方裁判所平成17年(ワ)第7696号)、いわゆる大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判控訴審で、「本件各控訴および各控訴人らの当審各拡張請求をいずれも棄却する。当審における訴訟費用は控訴人らの負担とする」との判決を言い渡した。

2.大阪高裁判決は基本的に原審を維持し、ふたたび、沖縄戦の真実を歪曲した控訴人(原告)らの主張の誤りを明確にしたばかりでなく、控訴人らの主張の信用性を立証するための裏付け調査等がなされた形跡もないことなど、きわめて問題だと指摘し,控訴人ら弁護士の立証活動が科学的、実証的なものではなく,いい加減なものであったと指摘したものと言える。

3.それにかかわって、控訴人梅澤が「自決するな」と言ったという主張を明確に否定し、住民に玉砕(自決)を求める方針を決して変更しなかったことも認定したことは重要である。さらに控訴人らが持ち出した宮平秀幸新証言を虚言と断じ、それを擁護し補強を試みた藤岡信勝意見書なども採用できないと断言したことも重要である。

4.戦隊長梅澤・赤松の玉砕(自決)命令については、「伝達経路が判然としない」という原審を訂正し、「住民への直接命令」と狭く限定したうえで、証拠上からそれを認定するのは無理があるとした。本来ならば、事実上の戒厳令下の「合囲地境」にあった慶良間列島において、命令の伝達経路は明確にされており、隊長命令なしに集団死が起こり得なかったことを判示すべきだったと考える。

5.しかし重要なことは、もっとも狭い意味での隊長命令の存在を認定しなかったからといって、それが、隊長命令がなかったことを意味するものでもなく、総体としての日本軍の強制ないし命令と評価する見解もありうると、高裁判決が明言していることである。

6.そのさい、国家機関としての裁判所は本訴訟の主題である名誉毀損等の成否にかかわる限りで歴史事実についての判断をするべきであって、本来、歴史的事実の認定は歴史研究の場において研究し論議を蓄積していくべきものであるとしたのは妥当な判断であり、それは控訴人らが集団死についての軍命の存在を否定することを裁判所に求め、それをもって教科書を書き換え、国民の歴史認識を歪曲しようとしたことの不当性をいっそう明らかにしたものといえる。

7.高裁判決は、新たに、日本国憲法が保障する言論表現の自由を最大限に尊重することが民主主義社会の基盤であるという立場から、出版差し止めが成立するための条件を明確にし、それにもとづいて出版差し止め請求を棄却した。これは憲法が定める権利の保障をいっそうすすめるうえで貴重な判断である。とりわけ公務員に関すること、いいかえれば国家権力の行為についての自由な言論の保障の必要性が高いことを明確にしたことは重要である。この判断に従うならば、国家権力を構成する軍隊の行為について教科書においても自由な言論が保障されるべきである。教科書記述を政府が認める特定の枠のなかにとじこめようとする教科書検定、とりわけ今回の沖縄戦検定の不当性は、この点からもいっそう明らかになった。

8.よって文部科学省に対し、沖縄戦に関する2006年度検定意見をただちに撤回し、「集団自決」における軍の強制・命令の記述の復活を含め、記述の再訂正による改善を直ちに認めることを強く要求する。

9.控訴人らは最高裁に上告するとのことであるが、最高裁に対し、すみやかに上告を棄却することを求める。

連絡先:大阪市北区芝田2−4−2牛丸ビル3階「うずみ火」編集部
                       電話・FAX 06−6453−2448


高裁判決についてのコメント

    大 江 健三郎

 ベルリン自由大学での講義のためにベルリンに滞在しており、判決を直接聞くことができませんでした。いま、私たちの主張が認められたことを喜びます。

 私が38年前にこの『沖縄ノート』を書いたのは、日本の近代化の歴史において、沖縄の人々が荷わされた多様な犠牲を認識し、その責任をあきらかに自覚するために、でした。沖縄戦で渡嘉敷島・座間味島で七百人の島民が、軍の関与によって(私はそれを、次つぎに示された新しい証言をつうじて限りなく強制に近い関与と考えています)集団死をとげたことは、沖縄の人々の犠牲の典型です。それを本土の私らはよく記憶しているか、それを自分をふくめ同時代の日本人に問いかける仕方で、私はこの本を書きました。

 私のこの裁判に向けての基本態度は、いまも読み続けられている『沖縄ノート』を守る、という一作家のねがいです。原告側は、裁判の政治的目的を明言しています。それは「国に殉ずる死」「美しい尊厳死」と、この悲惨な犠牲を言いくるめ、ナショナルな氣運を復興させることです。

 私はそれと戦うことを、もう残り少ない人生の時、また作家としての仕事の、中心におく所存です。


高裁 判決要旨

2008年(平成20年)10月31日

 【判断の大要(判決114頁以下)】

 当裁判所も,原審同様,控訴人らの各請求は,当審で拡張された分を含めていずれも理由がないものと判断する。

(1)「太平洋戦争」の記述は控訴人梅澤の,「沖縄ノート」の各記述は控訴人梅澤及び赤松大尉の,各社会的評価を低下させる内容のものであったと評価できること,しかし,これらは高度な公共の利害に関する事実に係わり,かつ,もっぱら公益を図る目的のためになされたものと認められること,以上の点は,おおむね原判決が説示するとおりである。

(2)座間味島及び渡嘉敷島の集団自決については,「軍官民共生共死の一体化」の大方針の下で日本軍がこれに深く関わっていることは否定できず,これを総体としての日本軍の強制ないし命令と評価する見解もあり得る。しかし,控訴人梅澤及び赤松大尉自身が直接住民に対してこれを命令したという事実(最も狭い意味での直接的な隊長命令−控訴人らのいう「無慈悲隊長直接命令説」)に限れば,その有無を本件証拠上断定することはできず,本件各記述に真実性の証明があるとはいえない。

(3)集団自決が控訴人梅澤及び赤松大尉の命令によるということは,戦後間もないころから両島で言われてきたもので,本件各書籍出版のころは,梅澤命令説及び赤松命令説は学会の通説ともいえる状況にあった。したがって,本件各記述については,少なくともこれを真実と信ずるについて相当な理由があったと認められる。また,「沖縄ノート」の記述が意見ないし公正なる論評の域を逸脱したとは認められない。

   したがって,本件各書籍の出版はいずれも不法行為に当たらない。

(4)本件各書籍(「太平洋戦争」はその初版)は,昭和40年代から継続的に出版されてきたものであるところ,その後公刊された資料等により,控訴人梅澤及び赤松大尉の前記のような意味での直接的な自決命令については,その真実性が揺らいだといえるが,本件各記述やその前提とする事実が真実でないことが明白になったとまではいえない。他方,本件各記述によって控訴人らが重大な不利益を受け続けているとは認められない。そして,本件各記述は,歴史的事実に属し日本軍の行動として高度な公共の利害に関する事実に係わり,かつ,もっぱら公益を目的とするものと認められることなどを考えると,出版当時に真実性ないし真実相当性が認められ長く読み継がれている本件各書籍の出版等の継続が,不法行為に当たるとはいえない。(注 この判断の前提となる法律的判断は,後記の抜刷りのとおり)

(5)したがって,控訴人らの本件請求(当審での拡張請求を含む)はいずれも理由がない。

【証拠上の判断】

(1)控訴人梅澤は,昭和20年3月25日本部壕で「決して自決するでない」と命じたなどと主張するが,到底採用できず,助役ら村の幹部が揃って軍に協力するために自決すると申し出て爆薬等の提供を求めたのに対し,求めには応じなかったものの,玉砕方針自体を否定することもなく,ただ「今晩は一応お帰り下さい。お帰り下さい」として帰しただけであると認めるほかはない(判決208頁以下に詳述)。

(2)宮平秀幸は,控訴人梅澤が本部壕で自決してはならないと厳命し,村長が忠魂碑前で住民に解散を命じたのを聞いたなどと供述するが,明らかに虚言であると断じざるを得ず,これを無批判に採用し評価する意見書,報道,雑誌論考等関連証拠も含めて到底採用できない(判決240頁以下に詳述)。

(3)梅渾命令説,赤松命令説が援護法適用のために後から作られたものであるとは認められない。これに関連して,照屋昇雄は,援護法適用のために,赤松大尉に依頼して自決命令を出したことにしてもらい,サインなどを得て命令書(?)を摸造した旨を話しているが,話の内容は全く信用できず,これに関連する報道,雑誌論考等も含めて到底採用できない(判決189頁以下に詳述。203頁で総合判断。)。

(4)宮村幸延の「証言」と題する親書の作成経緯を,控訴人梅澤は,本件訴訟において意識的に隠しているものと考えざるをえない。証拠上認められるその作成経緯に照らし,「証言」は,家族に見せ納得させるためだけのものだと頼まれて初枝から聞いていた話をもとに作られたものば過ぎず,遺族補償のために梅澤命令が摸造されたものであることを証するようなものとは評価できない(判決194頁以下に詳述)。

(5)時の経過や人々の関心の所在,本人の意識など状況の客観的な変化等にかんがみると,控訴人らが,本件各書籍の出版等の継続により,その人格権に関して,重大な不利益を受け続けているとは認められない(判決273頁以下に詳述)。

【判断の大要(4)の前提となる法律的判断(判決121頁以下の抜刷り)】

         (原判決の説示を引用する形をとっているが,ゴシック部分が当裁判所が新たに判示した部分である。)

  『人格権としての名誉権に基づく出版物の印刷,製本,販売,頒布等の事前差止めは,その出版物が公務員又は公職選挙の候補者に対する評価,批判等に関するものである場合には,原則として許されず,その表現内容が真実でないか又はもっぱら公益を図る目的のものでないことが明白であって,かつ,被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被るおそれがあるときに限り,例外的に許される(最高裁昭和61年6月11日大法廷判決・民集40巻4号872頁参照)。

  本件では,既に出版され,公表されている書籍の出版等差止めを求めるものであるが,表現の自由,とりわけ公共的事項に関する表現の自由の持つ憲法上の価値の重要性等に鑑み,原則として同様に解すべきものである。さらに,本件のように,高度な公共の利害に関する事実に係り,かつ,もっぱら公益を図る目的で出版された書籍について,発刊当時はその記述に真実性や真実相当性が認められ,長年にわたって出版を継続してきたところ,新しい資料の出現によりその真実性等が揺らいだというような場合にあっては,直ちにそれだけで,当該記述を改めない限りそのままの形で当該書籍の出版を継続することが違法になると解することは相当でない。そうでなければ,著者は,過去の著作物についても常に新しい資料の出現に意を払い,記述の真実性について再考し続けなければならないということになるし,名誉侵害を主張する者は新しい資料の出現毎に争いを蒸し返せることにもなる。著者に対する将来にわたるそのような負担は,結局は言論を萎縮させることにつながるおそれがある。また,特に公共の利害に深く関わる事柄については,本来,事実についてその時点の資料に基づくある主張がなされ,それに対して別の資料や論拠に基づき批判がなされ,更にそこで深められた論点について新たな資料が探索されて再批判が繰り返されるなどして,その時代の大方の意見が形成され,さらにその大方の意見自体が時代を超えて再批判されてゆくというような過程をたどるものであり,そのような過程を保障することこそが民主主義社会の存続の基盤をなすものといえる。特に,公務員に関する事実についてはその必要性が大きい。そうだとすると,仮に後の資料からみて誤りとみなされる主張も,言論の場において無価値なものであるとはいえず,これに対する寛容さこそが,自由な言論の発展を保障するものといえる。したがって,新しい資料の出現によりある記述の真実性が揺らいだからといって,直ちにそれだけで,当該記述を含む書籍の出版の継続が違法になると解するのは相当でない。もっとも,そのような場合にも,(1)新たな資料等により当該記述の内容が真実でないことが明白になり,他方で,(2)当該記述を含む書籍の発行により名誉等を侵害された者がその後も重大な不利益を受け続けているなどの事情があり,(3)当該書籍をそのまま発行し続けることが,先のような観点や出版の自由などとの関係などを考え合わせたとしても社会的な許容の限度を超えると判断されるような場合があり得るのであって,このような段階に至ったときには,当該書籍の出版をそのまま継続することは,不法行為を構成すると共に,差止めの対象にもなると解するのが相当である。

  そして,本件で問題になっているのは,第2・2(1)アのとおり,太平洋戦争後期に座間味島で第一戦隊長として行動した控訴人梅澤及び渡嘉敷島で第三戦隊長として行動した赤松大尉が,太平洋戦争後期に座間味島,渡嘉敷島の住民に集団自決を命じたか否かであって,控訴人梅澤及び赤松大尉は日本国憲法下における公務員に相当する地位にあり各記述は高度な公共の利害に係り,後記のようにもっぱら公益を図る目的のものであるから,本件各書籍の出版の差止め等は,少なくとも,(1)その表現内容が真実でない…ことが明白であって,かつ,(2)被害者が重大な不利益を受け続けているときに限って認められると解するのが相当である。』

(HP管理者注 HP掲載にあたり本文中のマル数字はJIS外のため、(数字)に変えてあります)


アジア太平洋戦争の末期、沖縄戦初期、慶良間列島の座間味島、渡嘉敷島で起きた「強制集団死」(「集団自決」)をめぐり、作家の大江健三郎さんと岩波書店が訴えられた「大江・岩波沖縄戦裁判」。

大江さん、岩波書店を支援するだけでなく、歴史の改ざんを許さず、沖縄戦の真実を広めるために結成された会です。

大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判支援連絡会 

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